RICソフトウェア支援ツール開発のご提案
- はじめに
河川の流れや地形変化のシミュレーションを行う「iRICソフトウェア」の利用効率を向上させるための支援ツール開発についてご説明します。iRICソフトウェアの利用には、メッシュ作成や
データ形式変換など、複数の前処理・後処理作業が必要となります。これらの作業を効率化するツールをご提供することで、ユーザーの皆様は、より高度なシミュレーションと解析に集中できるようになります。 - 課題
RICソフトウェアを利用する際、ユーザーは以下のツールを個別に準備する必要があり、作業の煩雑さが課題となっています。
1.メッシュの作成
シミュレーションに必要な地形データを格子状のデータ(メッシュ)で作成するツール
直交座標系または経度緯度座標系に対応
2.データ形式の変換
iRIC専用データ形式と汎用的なCSVファイルとの相互変換ツール
3.計算結果の変換
シミュレーション結果をGISデータに変換するツール
4.結果の比較
シミュレーション結果や異なる時点のデータを比較し、変化や差分を可視化するツール - 提案ツール
これらの課題を解決するために、以下の機能を持つツールを開発いたします。
非構造格子の作成支援 | 複雑な地形に対応するための非構造格子作成を支援 |
Rivファイル作成支援 | iRICで河川形状や情報を扱うための Rivファイル作成を支援 |
Anaconda/Minicondaによる出力支援 | Python環境を用いたiRIC計算実行を サポート |
合流地点のモデル作成支援 | 複雑な合流地点のシミュレーションモデル作成を支援 |
プロジェクトファイル作成支援 | iRICのプロジェクトファイル(ipro)作成を支援 |
GISソフトとの連携 | ArcGIS等のGISソフトとのデータ連携機能 |
効率的なツール開発環境 | Notebookを活用したPythonによる効率的なツール開発・自動化機能 |
ユーザー独自ツールの利用 | Pythonで開発したユーザー独自ツールの 利用を可能とする機能 |
ArcGIS Proでのconda※1環境利用 | ArcGIS Pro上でconda環境を利用可能と する機能 |
※1(conda: Pythonを使うために必要な様々なプログラムを、まとめてインストールしたり、管理したりするためのツール。これにより、iRICと連携するツールをスムーズに動かすことができる。)
- ツール活用事例
開発するツールは、以下の様なケースで活用できます。
浸水想定区域内の浸水状況把握による河川改修の必要性評価
県管理河川別の浸水想定区域資産算出による河川改修優先順位決定
水害リスクラインデータの変換
- 事例1:合流モデル作成支援
合流モデルの作成にはGISツールが不可欠であり、本ツールはArcGISとの連携により、計画河道の掘削や引堤などの作業を効率化します。


- 事例2:橋脚モデル作成
非構造格子を用いることで、複雑な河道形状や橋脚等の構造物を詳細にモデル化し、より高精度なシミュレーションが可能となります 。


図 橋脚周辺のメッシュ構造とベクトル図
- 事例3:堰などの河川構造物モデル作成
ALBデータ等の河床データをGISソフトで編集し、非構造格子と組み合わせることで、堰などの河川構造物を精度良くモデル化できます 。 (ALBで使用する緑色レーザ、水底と陸地の地形を捉えることが可能)


図 緑色レーザによる堰周辺の地形
- 事例4:河口港モデル作成
河川下流端が港湾となっている場合、広大な領域を効率的にモデル化するために、GISソフトと連携した非構造格子生成ツールが有効です 。

図 河口港モデル
- 今後の展望:流況解析の重要性
河川構造物の経年劣化影響評価、安全性確保、災害リスク軽減、環境影響評価、効率的な維持管理のために、流況解析の重要性はますます高まっています 。本ツールは、これらの解析を支援し、より安全で持続可能な河川管理に貢献します 。 - GISツールを用いた全国河川流況解析のご提案
最新技術と昭和時代の設計図デジタル化を活用することで、全国の河川流況解析を比較的安価に実施することが可能です。この解析結果は、防災計画や河川管理に広く活用できると考えられます。
事例
ArcGISとの連携 GISデータとiRIC専用データ相互変換

ArcGIS Proでもconda環境が使用可能
使用例
○浸水想定区域内の想定床上浸水、床下浸水の個数の把握(500河川以上)
目的:河川改修の必要の有無を確認
○県管理河川別 浸水想定区域資産算出
目的:河川毎の資産を算出することによって河川改修の優先順位の決定
○水害リスクラインデータ変換
今後の流況解析の必要性
1. 経年劣化の影響評価
橋脚や堤防などの構造物は、時間の経過とともに劣化が進みます。これにより、構造物周辺の流れのパターンが変化し、局所的な洗掘や堆積が発生する可能性があります。モデル化と流況解析を行うことで、劣化が流れに与える影響を定量的に評価できます。
2. 安全性の確保
橋脚周辺の流速や流向を正確に把握することで、構造物の安定性を確認し、必要に応じて補強や改修計画を立てることができます。特に洪水時の流況をシミュレーションすることで、構造物が耐えられるかどうかを検証できます。
3. 災害リスクの軽減
近年の気候変動により、集中豪雨や洪水の頻度が増加しています。橋脚周辺の流況を解析することで、洪水時の洗掘リスクや構造物の破損リスクを予測し、災害対策を強化することが可能です。
4. 環境影響の評価
橋脚周辺の流れの変化は、河川生態系にも影響を与える可能性があります。モデル化により、流れの変化が魚類の生息環境や堆積物の分布に与える影響を評価できます。
5. 効率的な維持管理
流況解析を通じて、どの部分が最も劣化の影響を受けやすいかを特定し、維持管理の優先順位を決めることができます。これにより、コストを抑えつつ効果的な管理が可能になります。